2015年5月11日
「葬儀は故人を弔い、社会的・個人的に惜別する儀式であり、その業務に携わる者として、その社会的責任は重要なものである」。これは、G27の白井英(はなぶさ)さんのご実家である「一柳葬具總本店」の基本理念。創業から138年、数多くの葬儀を執り行ってこられた葬儀・葬具の専門業社です。
取材の日は、英さんのお父さまで、四代目の一柳 鎨(はじめ)社長にお話を伺いましたが、それに先駆けて、女子部から早稲田大学に進学、ご結婚後も東京にお住まいの英さんから、お父さまを介してメッセージをいただきましたので、ご紹介させていただきます。
「ご挨拶申し上げます。
昭和55年に南山高等学校女子部を卒業いたしましたG27の白井 英(旧姓 一柳)と申します。このたび、常盤会Webのご配慮で私の実家の事業のご紹介をとのお話をいただき、恐縮しております。
父 一柳鎨が社長を務めます(株)一柳葬具總本店は、明治10年の創業で、今年138年になり、父は四代目です。五代目は、私の妹の夫・泰樹。そして、その長男の道徳が六代目となります。道徳は、現在、南山中学男子部の3年生です。
このような機会を思いがけずいただき、大変ありがたく、今後ともよろしくお願いいたします」 白井英(一柳)
いちやなぎ中央斎場 地下鉄「吹上」駅から西700m いちやなぎ野並斎場 地下鉄「鳴子北」駅から西150m
名古屋市中区栄。大津通りをはさみ、松坂屋本店に対面する本社ビル。受付で名乗り、エレベーターが社長室のあるフロアーで止まり扉が開くと、一柳 鎨社長が 「お忙しい中を ようこそ」と、柔らかな物腰・穏やかな笑顔で迎えてくださいました。ご多忙のお時間をいただいたのは、こちらの方です。この日も、社会が求める大きな使命を果たされて、香川県から戻られたばかり。一柳社長が「全日本葬祭業協同組合連合会」顧問・「一般社団法人全国霊柩自動車協会」会長などを務められ、社会に貢献する「一柳葬具總本店」の使命と業務についてお尋ねいたしました。
(株)一柳葬具總本店 代表取締 一柳鎨 社長
「弔う心」を大切に 伝統的葬儀文化に則った「正しくあるべき葬儀」を追求
「一柳葬具總本店」は、明治10年に、「葬具商 一柳商店」として開業して以来、たくさんの方を送り出してきました。葬儀事業は、昔からの、うちの拘り(こだわり)であり、うちの精神でもあります。亡くなることは人生で一番大きな事、葬儀では死者に対する姿勢が最も重要になります。葬儀とは「故人を弔い、遺された者がその霊を慰め、惜別する宗教儀式」です。伝統的葬儀は、宗教文化に基づき、宗教・宗派にかなった道具を用いた正しいものでなければなりません。皆それぞれに信仰がある。キリスト教、仏教にも宗派がいろいろあって、これは、皆さん、好き嫌いではなく、代々、お持ちになっておられるものです。必ずそれに相応しい必要な道具があり、それぞれに意味があります。それは儀礼であり、作法といってもいい。「一柳葬具總本店」と名乗り、屋号に「葬具」と入れてあるその点に、うちの最も大事にしている姿勢があります。葬儀において、各宗教各宗派に必要な祭壇飾りをしなければならないという基本姿勢のもとに、他社にはみられない多種類の祭壇道具を揃えて、その為に奉仕することが使命だと考えています。葬儀は時代を反映するとはいえ、138年の歴史の中で、葬儀に対する姿勢は今も変わることはありません。「葬儀屋さんって何?」という表現をすれば、一番わかりやすいと思います。何をすることが自分の仕事なのか、何が根本で根源か、それを第一に考える。今の葬儀事業はあいまい。事があった時に、その心得で必要なものを飯食をもってお届けする。「何やる人ぞ」に、こだわりを持っている。それが「一柳葬具總本店」の第一の仕事です。
故人を弔うにふさわしい気品と厳粛さを大切に
創業以来、葬具商として培ってきた経験と見識を活かし、教義に基づいた祭壇を全て自社で制作しています。宗教宗派にかなった祭壇は、200種類を越え、すべての葬儀にお応えできるようにしています。斎場は、必ず全部入れかえて、飾付けは清楚で素朴なものという姿勢を貫き、祭壇は基本として、白木材です。
お花の設営の仕方にも、こだわりをもっています。たとえば、桜は喪の時は嫌うと言われた時代もありますが、自分は違うと主張しました。人は四季のどこかで亡くなる。大切な人が桜の時期に亡くなったんだと感じるためにも桜を供えればよい。挿し方や華美を避けることに配慮しながら四季をとりいれる。季節を前へ前へ、旬の花を集めるのは、実は難しいことでもある。しかし、儀式の規模に関係なく、季節感ある生の花を一輪でも供えてあげたい。この感覚が、うちの姿勢です。
時間厳守の儀式
真面目すぎる位に、時間を「絶対厳守」しています。どんなに規模が大きくても、何千人の会葬者がいらっしゃっても、進行時間をビシっと守る。それが受け継がれている一柳の伝統です。
葬儀文化の伝承
先代である父親は、「葬儀に対する姿勢や祭壇飾り」について厳しい人でした。だれしも葬式を大事ととらえている。葬儀業というのは、大事を任されているが、無事に終わって当たり前の厳しい仕事。突然、準備のないところに、家の奥の奥まで入る難しい仕事。失敗は許されず、手際の良さや配慮が求められる。「君みたいな若造にできるか」と言われたら、おしまいだと。畳のヘリを踏まない、などの気遣いから始まり、世の中のあれこれ・・・葬式をどうするか・・いろいろな家庭にお邪魔して、困ること、喜んでもらえることがわかっていく。だが、この学問は学校では教えない。四代目として、教科書には書かれていないことを、父の教えや実践から学んだ。だから、社内でも口うるさいほど。ご遺族の精神的な状態や希望に配慮できるよう、社内での教育を徹底している。葬儀と告別式をきちんと確立したのも先代だった。告別式は一般の会葬者。葬儀はその前の遺族親族式というように、この区分けで、会葬者の都合にも配慮し、焼香がお済みならばお帰りいただくことも可能にした。
時代性はあっても変わらないものを大切に
昔は「親の葬式は借金してでもやらなければ」という時代もあったが、今はそうではない。経費を抑えたいというのは当たり前の傾向としてある。それぞれの立場や考え方があるので、それはそれでよい。遠方の親戚や知人に会葬してもらうのは申し訳ないと思うかもしれないが、度々あることではないのだから、無理を掛け合うことも必要。よばれなかった人に対して、はねかえりもある。時代性はあるが、それぞれの家々の持つ雰囲気とお付き合いの仕方で、お互いにそういったものを大事にしていかないと、段々に、冷たい家庭になっていってしまう。子どもを墓参りに連れていくなど、家庭で大事にするものを伝えていくのが教育ではないだろうか。
災害時における遺体搬送支援協定
「一般社団法人全国霊柩自動車協会」の会長として、全国各自治体と災害時における遺体搬送の協力に関する協定締結を行っている。葬儀は通産省だが、霊柩事業は国土交通省の管轄。東日本大震災に支援協力したから、先日は香川県知事から依頼を受けて懇談した。2015年4月3日、日帰りで香川県に飛んで、香川県知事と災害時の協定書に調印したばかり。トラック協会をよんで、地元と合併。現地での監督もした。
香川県との災害時における遺体搬送の協力に関する協定締結(2015年4月3日)
(左から) 一柳社長・浜田恵造香川県知事・安松香川県霊柩会長
東日本大震災は、筆舌に尽くせない悲惨な形の災害で、あれだけの数のご遺体は、福島・宮城・岩手だけでは間に合わない。関東以北で霊柩自動車を派遣したが、それに対しておかげさまで協力させてもらえた。素人ではできないので、段取りと指導を葬儀事業者の立場と霊柩搬送の立場から伝えた。
御巣鷹山の航空機事故の時もそうだったが、昨年11月の御嶽山噴火の際も、長野県との提携で遺体搬送の支援を行った。現地の霊柩自動車の数が足りなくて、頼まれてうちから派遣した。町長が待っているから来てと言われて行ったが、今回は山頂まで行けなかった。廃校になった学校の教室に寝泊りして、麓でご遺体を霊柩自動車へ運んだ。長野県知事から感謝状もいただき、社会に貢献できることはありがたいことだが、災害でご遺体収容の活動をしなければならないのは、決して望ましいことではない。
海外からのご遺体の受け入れ、海外への移送業務の手続きの奉仕活動も行い、アフリカまでも搬送することもあります。ご遺体の修復・防腐処理・殺菌消毒・お化粧などの科学的な衛生保全も行っています。
ご家族
長女の名前は、英国の英とかいて『はなぶさ』と読みます。孫の誕生を喜んだ、ぼくの父親が付けてくれた名です。代々、漢字一字の名に、こだわりがあったようで、三代目の「稔」は、戦前、漢学者に相談しての命名。ぼくは、金偏に隼(はやぶさ)とかいて、鎨(はじめ)。『兆しが生じる」の意味があるようですが、漢語林(辞典)から父が付けてくれました。
長女の子供たちも東京の学校に行っています。長女自身も、今、学びたいことがあるようですが、仏祀りもあって、よく帰って来ます。でも、いろいろ話すと、怒られてしまうかな(笑)
談:一柳鎨社長
最後に、英さんからの「南山女子部の思い出」をご紹介いたします。
「今年の春は、瞬く間に通り過ぎてしまいましたが、思い出すのが、中1・橋倉先生の音楽の授業です。まだ緊張感の残る頃、ノートにドイツ語の『野ばら』の歌詞を書き留め、それからは何度も練習しました。そして歌唱テストの時、歌い終わりの音が先生のピアノの音と外れないようにドキドキしながら歌いました。ビバルディの春で始まる一日、板につかない制服とベレー帽、そして、『野ばら』・・昨日のことのように思い出せる一つ一つが、とてもいとおしく、そして、ありがたく感じます」
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後記
人生の最終章を弔いの心と儀礼を尽くして見送ることを生業とするお家柄。「人は季節のどこかで人生を終える。旬の花を供えてあげたい」 「遺体収容をしなくてはならない災害は望ましくない」・・一柳社長の人生観と死生観、すべての人に向けられた温かな眼差しを、取材時の短い言葉の端々に感じ取ることができました。
後日、一柳社長より、お孫さんの道徳さんが、男子部中学の生徒会長になられたことを伺いました。南山のスクール・モットーである「人間の尊厳のために」を学んで、将来、代々、継承された家業を受け継ぐ六代目の誕生を、顧客の一人として、同窓生のひとりとして心待ちにしております。
取材: 堀江陽平&塩野崎佳子
画像: (株)一柳葬具總本店さま提供
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一柳葬具總本店の社会貢献
1.災害時の支援活動
全日本葬祭業協同連合会・名古屋葬祭業協同組合と、一般社団法人全国霊柩車協会などと連携し、大災害時の支援を行っています。
2.奉仕活動
医学・医療のため、大学へ献体された方々の追悼の慰霊祭、顕彰式に協力しています。
3.海外移送
ご遺体の海外からの受け入れ、海外への移送業務の手続きを行っています。
4.エンバーミング
一般社団法人日本遺体衛生保全協会に加盟しています。ご遺体の修復・防腐処理・殺菌消毒・お化粧などの科学的な衛生保全の手配をしています。
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一柳 鎨氏
(株)一柳葬具總本店 取締役社長
(株)一柳商事 取締役社長
名古屋特殊自動車株式会社 取締役社長
一般社団法人全国霊柩自動車協会会長
全日本葬祭業協同組合連合会顧問
名古屋葬祭業協同組合最高顧問
学校法人名城大学理事
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株式会社 一柳葬具總本店 本社
名古屋市中区栄3-14-11
TEL:052-241-0658
FAX:052-263-1310
http://www.ichiyanagi-sougu.co.jp
株式会社 一柳葬具總本店 営業部
名古屋市中区千代田1-7-11
TEL:052-251-9296
FAX:052-263-1361
いちやなぎ中央斎場
名古屋市千種区千種2-19-1
TEL:052-745-1212
FAX:052-745-4321
いちやなぎ野並斎場
名古屋市天白区野並3-538-1
TEL:052-899-0111