2017年8月18日
今回のタウンぶらぶらは、古書・古本の販売・買取がご専門の「長谷川書房」さんです。常盤会で新たにスタートした「母校支援・古本寄金」事業にもご参画いただいています。瑞穂区汐路町の緑豊かな住宅街の一角に在る長谷川書房で代表の長谷川孝さん(S31)にお話を伺いました。
長谷川書房 名古屋市瑞穂区汐路町5の7汐路ハイツA
10坪の店内。3方は本の壁。天井までジャンル・時代別に並べられた古書の背表紙が、まるで語りかけてくるような独特の雰囲気。読書好きにはたまらない空間です。ただし、ここに在るのは、長谷川書房が所蔵する古書のほんの一部で、店舗から2キロの倉庫には、10万冊の蔵書が出番を待っています。
長谷川 孝さん(S31)
マニア垂涎の絶版ミステリー コレクション
得意ジャンルは、既に絶版になったミステリー・SF・コミック・芸能雑誌・専門書(オカルト・医学・建築)など。とりわけ、早川書房や東京創元社の絶版ミステリーは、マニア コレクター垂涎の的。「先日も、関東からわざわざ、絶版ミステリーのレアものを見るために、店頭に来られた方がありましたね。お陰さまで、マニア同士の繋がりや口コミで全国的に知られるようになりました」。 実店舗を構えているのが、長谷川書房の強みの一つのようです。実際、今、名古屋の古書組合に所属する約100軒のうち、実店舗を構えるのは1割から2割程度。
長谷川書房も、店頭での買取や販売を大切にしながら、時代に呼応して、Amazonやヤフオクの出店ネット販売の戦略を講じておられます。午前中は、出張買取のために、名古屋市内を中心に、時には岐阜県・三重県までも足を伸ばします。午後は、店頭に立ちながら、ネットで受注のあった商品の梱包・配送や、買い取った品の仕分けや出品作業で毎日があっという間に過ぎていくそうです。
脱サラして古本世界へ
長谷川さんが古本の世界に入ったのは、今から22年前。南山大学法学部卒業後、勤めた大手企業からの脱サラを目指した1995年。「いわゆる今でいうブラック企業でした。朝6時に起きて帰るのは午前様。上司が白といえば黒でも白。『社会の歯車にはなれない』と、自分に合う自営の道を模索していた矢先に、出入りしていた北区の古本店『マンガハウス』のオーナーから、高齢で次代にあった商売ができないので、店を受け継いで欲しいと言われて引き継ぐことに。店名の通り、得意ジャンルはヴィンテージ漫画でした。とはいえ、ヴィンテージ漫画の知識はまるっきり無く、失敗の連続でした。5000円の価値のある本を200円で売ってしまったり(笑)」
「長谷川書房」開業
満を持しての「長谷川書房」の誕生は2004年(平成16年)。瑞穂区に店舗を移したのを契機に、屋号の「マンガハウス」を「長谷川書房」に改めたのは、前身のマンガ専門のイメージを払拭して、得意ジャンルの拡大をアピールするため。場所を北区から実家に程近い、現在の瑞穂区汐路町に移したのも、この地域が文教地区で良書を持っておられる方が多いだろうと考えて。店舗での売上が減少しネット販売が主流になる中で、いかに良い本を入荷できるかが、これからの生き残りの鍵となるようです。取扱いジャンルは古書だけに限りません。大正時代の画家・大野麦風の版画も出色です。
大野麦風 版画
「常盤会古本寄金事業」参画
常盤会で古本寄金事業がスタートした2年目の秋、会報103号で事業の存在を知り、「同窓生である自分がやらなければ」の想いだったそうです。2017年4月から、業務の傍ら、常盤会員からの「買取依頼」に柔軟にご対応くださっています。
「常盤会古本寄金」は、家庭で眠っている古本を、会員各自が古本買取店に委託(寄贈)して、その買取金額が買取店より常盤会の母校支援口座に振りこまれる形の母校支援事業です。会員からすると、電話一本、古本によって、母校支援に貢献できる仕組みです。その簡便さの反面、委託業者の献身があって成立する事業だと言えます。
買取業者は、(株)バリューブックスと長谷川書房の2店舗ですが、バリューブックスの引取り業務はヤマト便の代行によるもので、事前の荷造りが必要ですが、長谷川書房の場合は、長谷川さんご自身が出向いて査定を行って引き取ってくださる点が異なります。思い入れの残る書籍を手放そうか迷いのある場合などは、長谷川さんにご相談されるのも一計です。「自宅引取りはチョットね」と仰る方には、瑞穂区の店頭に直接、持ち込んでいただくのも大丈夫とのことです。
「最近では、『名古屋叢書』など、歴史・民族関連の書籍を男子部で教鞭をとられていた先生から寄贈いただきました。リアルタイムで教えていただいたことがなかったのは、ちょっと残念でしたが。7月には、南山OB・OGの保護者の方から、引っ越しのための買取依頼があり、この時は、本よりCD・DVDが査定額のほとんどでした。値がつかず処分する手間ばかりがかかる事もありますが、常盤会や母校のためならの気持ちです」
「常盤会古本寄金」は2017年7月末現在、延べ20件のご寄贈により計8万円強の母校支援基金が積み上げられています。
コレクター注目の町の古本屋さん
男子部時代に響庭(あいば)先生の影響を受けて、教師になろうと、男子部で教育実習を行った際、「長谷川先生には生徒を叱れないんじゃない?」と生徒から指摘され、「生徒の人生に責任を持つことになる教師。確かにちゃんと叱ることのできない自分には、教師は向かないと断念しました(笑)」。先日、久しぶりにS31の同期会に参加しました。みんな立派にやってますね。ちなみに、常盤会で古本寄金事業が始まっていることは、あまり知られていなかったかな(笑)」
「正直、忙しくて本を読む暇もあまりありませんが、仕事が楽しくて仕方ありません。サラリーマン時代のストレスもありません(笑)。収入はかなり減りましたが、サラリーマン時代には味わえなかった充実感がありますね」
「今年になって体調を崩し、健康の大切さと周りの人たちへの感謝を再認識しました。その気持ちを忘れず、これからもお客さまに『探していた本がみつかって嬉しい』との言葉をいただけるように努めたいです」
取材:塩野崎・加藤順平
長谷川書房
名古屋市瑞穂区汐路町5-7 汐路ハイツA
052-852?3315
営業時間:13時から21時