2015/3 平成芸術花院 主宰 小川珊鶴  – Nanzan Tokiwakai Web
  1. HOME >
  2. タウンぶらぶら歩き

タウンぶらぶら歩きTown BURABURA Walking

南山タウンに広告掲載されているお店や会社の訪問記

2015年3月16日

2015/3 平成芸術花院 主宰 小川珊鶴 

自然を愛で 花を生ける。名古屋・東区で「平成芸術花院」を主宰する花道家・小川珊鶴(本名 高史)さん(S30) は、 日本文化や伝統行事の中にある日本人の美意識や感性を大切に、伝統文化を継承することの意義を伝えようと、いけ花のお稽古・出稽古のほか、さまざまに活動していらしゃいます。


平成芸術花院 主宰 小川珊鶴(本名 高史)さん S30

幼少期から、日本文化や芸事に慣れ親しむ環境に育ちました。名古屋・大曽根で代々、家具商を営んでいたご実家は、住み込みの従業員やお手伝いさんの行儀見習いのために茶華道の師匠を招じいれるご家庭で、ご本人も小さい頃から、茶華道・日舞・長唄などを習い、ご親族が名古屋の歌舞伎座ともいうべき「御園座」の監査役をしていた関係で、叔父上のお通夜には歌舞伎役者の中村歌右衛門丈、女優の水谷八重子さんも参列したという「芸事好き一家」で、幼くして、ひとりで歌舞伎を観に行くような子供時代でした。

自然の営みとしての花に目覚めたのは、南山中学男子部から転校した三重県の全寮制高校・日生学園時代。「文字通り、日が生まれる頃に起きて、道場の床を素足で磨き、毎日6キロの山道を走るのが寮生活の日課でした。走りながら、四季の移ろいに姿を変える木々や花を眺め、明日は、この松の枝を切り出して、卒入学式の講堂を飾ろうなどと考える喜びや楽しみを感受しました。そのことが、大きな作品を創作する原点ともなりました」

日本の花を描きたいと、名古屋芸術大学・日本画科に進学。しかし、心から沸き起こる、やりたいと願って愛した対象は、描いた花ではなくて、幼い頃から習い覚えた生け花でした。そして、「絵筆を花枝にもちかえて」美を表現する「花の道」を進み始めました。

1981年(22歳)、花工房「アトリエ花」をたちあげ、バブル期のディスコやファッションビルが、花によるディスプレーを求める時代に、桂由美さんデザインの花嫁衣裳のブーケ造り、デザイナー建築のコンクリート住宅など個性的な空間を花で演出。中京テレビの生番組「ヴィヴィアン」の挿花を6年半、担当するなど、流儀にとらわれない独創的な「いけ花」の造形美を追求しました。

「小川珊鶴 「花会を伝統文化の総合芸術に」

1990年(30歳)、初の花会「蓮華自在」以来、小川珊鶴の花の世界は、従来の「いけ花」を展示する「華展」のスタイルに留まらず、花を生ける空間を、総合的な芸術空間に創り上げることを信条としてきました。そこには、華道の成り立ち期、室町の将軍家に仕え、しつらえとしての空間を花で飾り、将軍の身の回りを調度品で設えた、同朋衆という、花を生業とした先達への畏敬の念が在ると仰います。

1991年に 平成芸術花院 創設。 幼少期に培った古典芸能への造詣。芸大で体系的に学んだ美の概念。自然や命あるものへの崇敬。これらを根底とした幽玄で幻想的な作風が、活動の場を広げていきます。毎年、恒例となった各国領事館・大使館主催のレセプション・パーティでは、海外のメディアに「壮大な美」と評価され、徳川美術館内のお茶席が初めて個人の個展を許したのを皮切りに、名古屋ボストン美術館、名古屋能楽堂など、生花や水気を嫌う美の殿堂が、次々と、「小川珊鶴の花会」の舞台となりました。

2009年11月 舞&いけ花「花舞伎」公演 御園座
源氏物語を題材に 舞いながら花を生ける公演が名古屋市民芸術祭特別賞を受賞


2010年7月 花会「狂花奇譚」
名古屋開府400年を記念して、尾張徳川の宗春公ゆかりの興正寺で花会を催す


2012年11月 ギネス認定公演「花舞伎」 名古屋能楽堂


ギネスに認定された帯が能楽堂を飾る


舞台空間を整え 自らも 演者として舞台にたつ

演目の「紅葉狩」を舞いながら挿花する

2013年11月 いけ花と染色美の融合「小川珊鶴の世界」 豊田市美術館


拳母城址の隅櫓を もみじと菊の文様の帯・着物で飾る

芸どころ尾張名古屋を伝承する
茶花道・香道・日舞・陶芸といった古典芸能の担い手たちがコラボレートする「和んぱく会」を定期的に続け、陶芸家の加藤春鼎先生と「器といけ花」のコラボ作品展を果たすなど、芸どころ名古屋の文化芸能を活性化することにも努力を惜しみません。日本橋三越本店、名古屋三越では、花道家として考案・制作した花器の発表も行いました。

2013年夏 「和んぱく会」
表千家古今庵 谷口剛久師・ 陶芸 3代加藤春鼎師 ・西川流家元補佐 西川まさ子師


2013年  日本橋三越 「花と器特集」 ホテルニューオータニ


小川珊鶴 考案&作 花器のお披露目

2014年 名古屋三越特選画廊 「いけ花と器 古今へのいざない」

自身デザインのDM&ポスター  いけ花作品(右)

能・音楽コンサート・演劇の舞台美術監督も務める
2015年1月 MAKO企画 演劇 愛知芸術文化センター

珊鶴ワールド 「四季の花を通して伝統美や礼節を学ぶ」講座

「いにしえの人々は植物に神が宿ると考え、季節の節目に山野から草花を手折って、家屋や身の回りに花を飾りました。着物や帯に、四季の花が意匠されることにも、植物を身にまとうことで、自然の生気を抱き永遠の命を宿そうとした古来の人々の願いが表れています」。 こうした日本人ならではの人生観や美意識を、珊鶴さんは、有職故実にのっとった「五節供の儀礼の花」 「いけ花の花ごよみ」「日本の伝統美と文様」など、通年の講義にのせて、日々の暮らしに取り入れる意味やヒントを伝授してくださいます。

文化庁主催「こども伝統いけ花教室」開催

「学校行事でクリスマスはするけれど、七夕は宗教行事だからいけないという保護者からの意見があると聞きましたが、七夕は、技芸上達を願った宮中行事に端を発しています。かつて、幼稚園や小学校でお遊戯会が七夕に行われていたのも、手習いの上達を願うその名残からです。親世代に知識や理解があれば、子供たちの日本文化への関心も深まっていきます」。こうした珊鶴さんの願いと、文化庁の「親子伝統文化事業」の主旨が一致して、平成芸術花院では、四季を通して一年10回をシリーズに、親子で参加する「中京伝統こどもいけ花教室」を古川美術館の会議室にて行っています。(この春からも新期開催予定)

2014年度は、古い町並みを残す中村区四間道のお蔵での制作・発表会や、古川為三郎記念館での卒業制作発表会が行われるなど、珊鶴先生愛蔵の掛け軸やお道具を神妙に扱う子供たちを、心配そうに見守る母世代 祖母世代も共に楽しみ、毎回、リピーター参加が多いのもうなづけます。

2015年1月 文化庁主催「中京伝統こどもいけ花教室」卒業制作発表会 古川記念館


桐箱 塗籠に入った先生のお道具から 子供たちが気に入った花器を選ぶ


今日の花材は 松と胡蝶蘭

               子供たちの完成作品


「花道とは、空間を単に装飾する技法ではなく、一輪の花に森羅万象を感じさせるもの。花の傾き、ひと枝の流れ、散りゆく花びらにも自然の営みがあり、その強さ、はかなさ、美しさへの慈しみをこめるもの。芸事にあって、世界で唯一、生きものを扱う芸術が いけ花でしょう」。

1987年「世界最大のいけ花」のギネス認定に続き、十数年にわたって集めた「着物・帯の収集」が、2012年のギネス認定を受けましたが、妥協を許さない花にかける情熱もギネス級です。

文と写真:塩野崎
一部画像提供:写真家 近藤奈生子氏

2015年4月新講座
☆「日本伝統文化を花で読み解く」(全12回)

第1回   卯月 「桜」
4月21日(火)10時から12時

第2回     皐月 「牡丹 藤 菖蒲」
5月19日(火)10時から12時

第3回     水無月「水・雨」
6月23日(火)10時から12時

会場:サロン・ド・Arimoto 千種区日岡町1の9
申込:052-763-3809 (TEL&FAX)

☆「文化庁主催 中京伝統こどもいけばな教室 新講座」(全10回)

4月開始予定
お問い合わせ&お申込み
平成芸術花院 090 1822 1500
FAX 052 981 5491

タウンぶらぶら歩き一覧