2019年5月26日
2019年は令和元年。
それまでの天皇陛下が退位し、新たな天皇が即位され元号も変わりました。これまでの皇室の伝統を引き継ぎ、新たな天皇は国際親善に力を注がれることと思います。
5月末には、新天皇のもとトランプ大統領を国賓として迎えるというニュースが報道されています。
11月にはバチカンのフランシスコ教皇の訪日が予定されています。
日本の天皇の生前退位が200年ぶりということで話題になりましたが、バチカンでは、2013年に600年ぶりに教皇の生前退位があり、フランシス教皇が誕生しました。
2019年3月に平凡社から出版された乗浩子氏の著書『教皇フランシスコ:南の世界から』(平凡社新書)は、フランシス教皇の人物像、キリスト教と世界を取り巻く環境の社会の変化、今日の課題などについて書かれており、キリスト教の知識のない者であっても理解でき且つ大変読み応えのある素晴らしい本です。
2013年に第266代ローマ教皇に選出されたフランシスコ教皇(ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ)は、初めてのラテンアメリカ出身者(アルゼンチン出身)で、イエズス会出身者が教皇に選出されることも初めてです(日本にキリスト教を布教したフランシスコ・ザビエルもイエズス会です)。
第二次世界大戦後、開発途上で貧困が深刻であったラテンアメリカのキリスト教では、貧しく抑圧された人々を解放し、社会正義を追求することが神学の課題であるという「解放の神学」の考えが生まれました。
アルゼンチンのベルグリオは、貧しい人々と接し、彼らを支援するとともに彼らから学びました。教皇に就任してからも、神の前では皆が平等であり、一般謁見では障害者や弱者との触れ合いを大切にしているそうです。
教皇庁の改革を行い、アジア、アフリカ、ラテンアメリカから多くの人材登用をしました。今日報道されるようになったカトリック教会聖職者による子どもへの性的虐待といった犯罪の根絶を強調したり、東方正教会やプロテスタントなどのキリスト教諸派との対話、ユダヤ教やイスラム教など宗教間の対話も大切にしています。中国との関係も課題のようです。
そして平和への祈りとして、被爆直後に長崎で撮影された「焼き場に立つ少年(原爆で亡くなった弟を背負い火葬場の順番を待つ少年)」の写真に心を打たれ、写真を印刷し、横に「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えて教会関係者に配布をしたそうです。
この本を読みながら、約40年近く前に南山中学・高等学校の宗教の時間に学んだヨハネ・パウロ二世やマザー・テレサのことを思い出しました。
当時、宗教の科目は真野道子先生が担当されていて、1981年の教皇ヨハネ・パウロ二世訪日を記念し、バチカンの歴史や教皇ヨハネ・パウロ二世のことについてわかりやすく授業をしてくださいました。
ヨハネ・パウロ二世はポーランド出身で、第二次世界大戦でポーランドはナチスドイツの占領下に入り約600万人のユダヤ人が死んだこと、アウシュビッツ強制収容所でコルベ神父が捕虜の身代わりとなったことなど世界史の授業とは一味違う歴史を学ぶ機会でした。
マザー・テレサについては、南山高校で直接講演を聞く機会に恵まれ、とても感動したことを今でも覚えています。
後になって海外旅行で教会を訪れた時や美術館で宗教画を鑑賞した時などに、10代の好奇心旺盛な時期にキリスト教に触れたことが、私の教養の幅を広げてくれているのだろうなあと感じることがあります。このように『教皇フランシスコ』を通して、改めて南山での学恩に感謝する機会を得た次第です。
プロフィール 杉山知子 G33
愛知学院大学教授
専門は国際関係論