vol.159 (株)白鳩 横井 隆直(S45)「マスクがますますクローズアップされていく中で我が社が想うこと」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2021年4月24日

vol.159 (株)白鳩 横井 隆直(S45)「マスクがますますクローズアップされていく中で我が社が想うこと」

 ここまでの事態に世の中がなるとは誰もが思わなかった。マスクを巡ってのパンデミックを過去に何度か経験していたのである程度は予測できたが、コロナウイルスの騒動が始まって1年3ヶ月が経過しても収まりがつかない事態にもどかしさを感じる。

 この一年を振り返り、我が社を中心としたマスク業界に起こった変化について、3つお伝えしたいと思う。

 まず初めに、この業界を駆け巡った出来事・変化と言えば、原材料の奪い合い、それに伴う単価高騰だ。
 既存メーカーだけではなく、新たにマスク製造を始める会社も次々と参入、急速に激増したため手配が困難に陥った。一部の海外製原料は単価も10倍、20倍と上がる始末である。
 幸い我が社は90%以上を国内の自社工場で製造し、その原材料も日本製がほとんどであるため原料コストは安定しマスク製造に取り組むことができた。中国製よりも日本製コストが安くなるという異常な事態が業界では起こっていたわけだ。
 また幸いにも我が社は定期的に購買していたので何とか長期購買を約束でき、国内での入手も不安なく過ごせた。過去3度に渡るつらい経験(2003年SARS・2009年 新型インフルエンザ・2012年 MERSにおけるマスク騒動 )が無駄ではなかったことを改めて実感した。

 次になぜマスク不足に日本はなってしまったのか、製造ラインの構築の変化についてお話ししたい。
 使い捨て不織布マスク製造は装置産業である。よって設備がなければ製造はできず、その設備も在庫があるわけでもない。よって、急に増大した需要に対してどれだけ急いでも新設設備の設置には数ヶ月かかるわけで、パンデミック当初からしばらくマスク欠乏が続いたのはそのためである。こちらも幸い、中国工場などの設備を移動したり、既存設備を改良したりして生産数を確保し、少しでも多くの方に届く様、努力した。
一部の新規参入の企業に我が社のできることとして、技術・ノウハウをお伝えしライン立ち上げに協力することもした。

 最後に人材、組織の問題、それに伴う意識の変化である。より安心なより安全なマスクを1枚でも多く、1人でも多くの消費者に届けるために複雑な仕様の商品の生産を無期停止とした。当然、顧客にもしっかりと説明させて頂き、理解を得ることができた。
社内関係者は全員個別面談をし、想いを丁寧に説明、お願いをし、増産に備え、1直(8時間)を2直、3直にして生産数を上げる努力をした。
 
 最終的には材料調達にも限界があり、2直体制での生産が限界であったが、残業なども増やし通常時の2倍以上の生産をすることができた。
通常であれば、急な組織変更、仕様変更をすると不良率やロスは高まり、また欠勤率も増えるものだが、各々が高い意識をもって一致団結できたため、落ち着いた品質で欠勤者もでず、およそ半年以上に渡り生産することができた。社員の意識向上の変化はマスクが飽和してきた今も変わらず、大きな変化を会社にもたらせてくれたと感謝している。

 緊急事態宣言が解除され、また様々なマスクが多数の新規メーカーから発売されたこともあり、2020年初夏には売場にマスクが戻り始め、秋口にはマスクの在庫は過剰となった。

 実は長いマスク文化を持つ日本にも関わらず、他国に遅れ、その管理に明確なルールはなく、マスクが雑貨品という位置づけで製造販売されているのが実態であった。しかし、この度、日本衛生材料工業連合会の全国マスク工業会では、一般マスクにおける品質管理にJIS(日本産業規格)を導入することを決定した。
 
 コロナウイルス、または未知なるウイルスに対して、感染予防として益々有効性が確認された今、今後益々、安心安全なマスクを届けるため各社がよりよい管理体制の元、製造されることが期待されている。

 2009年新型インフルエンザ、2020年コロナウイルス、次に来る未知なるウイルスに備え、手洗い、マスクなどは健康を維持する予防としての有効性を全人類が改めて実感したはずだ。
新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が起こるのではと心配されていた。
しかし、インフルエンザ感染者数は、過去3年間の平均の1千分の1未満に留まったようだ。
すべてが手洗い、マスクに起因するとは思わないが、少なからず貢献したのではないかと想像する。

 マスク業界だけではなく、例外なく世界的に全ての産業、業種が影響を受けることになり、試行錯誤しながら何とかここまでやってきた。
 コロナにより大きなパラダイムシフトが起こり始めている。
今後も様々なイノベーションが生まれてくると思うが、マスクも同様、今までにない変わった素材、形状、コンセプトで新しいものがでてきている。マスク生活を楽しむ、これも大きな変革であると思っている。そんな中でも安定して安心安全なマスクを製造する。
よりよいマスクの開発に努める。
これからもマスクを通して人々の暮らし、幸福に貢献していきたい。
 
 
プロフィール
 1993年 3月 南山高等学校 卒業
 1994年 4月 大阪学院大学 流通科学部入学
 1997年10月 大阪学院大学 中退
 1997年10月 アメリカ シアトルHigh line community college入学
 2003年11月 株式会社白鳩 入社
 2015年 7月 株式会社白鳩 代表取締役就任

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