2011年12月21日
南山常盤会のみなさま、初めまして。そして、お久しぶりです。
12月に入って名古屋も寒くなってますか?
パリはすごく寒いですが、すっかり街中がXmas気分できらきらしてるので、寒さを忘れさせてくれるような楽しい気持ちになります!
私は南山女子部を卒業してからのこの9年で、中学生の頃夢の世界と描いていたモードの世界に入り、今はパリのファッションの会社(メゾン)でパタンナーの修行をしています。パリにはみなさんもよくご存じの、ディオールやシャネルを始め、老舗のメゾンが街中に軒を連ねてます。フランスの人たちみんなが、これらのメゾンをすごく愛していて、国の誇りだと思っているのが感じられるのが、うらやましいなと思ったりも。
でも、みんなが憧れて服飾の学校へ行って卒業しても、なかなか仕事が見つからない、というのは日本と同じです。学生のときに必ずスタージュというインターンシップを数ヶ月間、様々なところでするのですが、受け入れ先を自分で見つけてくるのも大変です。学校の紹介もありますが、募集は少ないのであてになりません。
そして多くの学生は卒業と同時に派遣会社に登録して、コレクションの前などの忙しいときだけ呼ばれて、期間労働者として働いて経験を積んでいます。
この派遣会社の制度、面白いなと思ったのは、いろんなメゾンを転々として働いたりするので、どこへ行っても誰か知り合いがいたり、また知り合いがどんどん増え広がっていって、パリのメゾンはみんなつながってる、という事です。夕方まで働いてた縫い子さんが、夜からは他のとこに手伝いに働きに行くなんてことは、ショーの前にはよくあること。それぞれの会社の枠をはずれて、パリのみんなで一緒にがんばってコレクションを作ってるというのが、私はすごく好きです。
私は、学校で知り合った日本が大好きなフランス人の友達から、今の職場ランバンを紹介してもらってスタージュすることができました。他のところへも行った後、またもう一度戻って、見習いの契約社員にしてもらって働いています。
いつも、にこにこしてるぽっちゃりムッシューのアルベール・エルバスが率いるランバンは、パリの高級ブティックが立ち並ぶ通りの一角に創設者ジャンヌ・ランバンのいた当時と変わらない場所にブティックを構えて、その建物の上で私たちは働いてます。通りを挟んで、メンズのブティック。そしてもう一つの向かいには、エルメスのブティックとアトリエがあり、窓からとなりの様子はお互いちらっと覗けたりしますよ!
そしてなんといっても、驚いたことに、会社の中は女性が大半。女性だけの部署もあったり、アトリエやデザインチームも8割近くが女性!コンピュータの管理の部署の男性たちもいますが、部長さんたちもほとんど家庭のあるママンです。すてきなママンたちの活躍を見ていると、日本とは違い、出生率が上がってるのもよく分かり、こういう職場の環境は真似してもいいんじゃないかと思います。
私の働いてる部署はというと、一人を除いて全員女性。そしてここでも赤ちゃんからもう大人までの様々な年齢の子どものいるママンたちばかり。みんなワインとお菓子が好きで差し入れが多くて(食べてばかり)、ぎすぎすしすぎていない、和気あいあいとした職場です。お母さんくらいの年代の部長さんは、私のことを自分の子どものように面倒をみてくれるし、家に何度もご飯に招いてくれるママンたちもいて、みんなほんとに優しくて、私は恵まれているな、ラッキーだなと感じています。余談ですが、日本人は童顔みたいで私もだいぶ若くみられてかわいがってもらってます。フランス人がませてるとも思うのですが。
この部署のお仕事は、年4回あるコレクション発表(ショーのある大きいものと、その間にある展示会だけのもの)のあと、商品にするために、普通サイズ(T38)になおして、工場向けのデジタルのパターンを作り、縫い方、始末の方法を考え、品質を
管理する事です。
大きな流れとして、
1)まず、デザイナーのチームと、モデリストとパタンナーたちが、細くて若いモデルさん(T36)に合わせて、ショーや展示会でのコレクション発表のための服作り。
2)その後、私たちの部署へすべて託され、普通サイズ(T38)のモデルさん(私にとってはぜんぜん普通ではなく、ものすごくスタイルのよい人)に試着してもらいます。もちろん、サイズがぜんぜん合わないので、たくさん修正が入り、それをパソコン上で直して、工場用のパターンを作ります。それに、ランバンの服はすごく複雑で、パターンを見ただけでは作れないものが多いので、部分的にまたは全部をもう一度試しに作ってみて、それも合わせて送り、工場の人たちに分かりやすいように心がけてます。
3)工場から送られてきたサンプルをまた試着。ボリュームや縫いの始末などをチェック。ぜんぜんだめならまた作り直し。少しのパターンの修正くらいで大丈夫な場合は、製品を試し作り。
4)送られて来た製品の寸法や、縫いの最終チェック。まただめならもう一つ試し作り。よければ、工場は注文の数の製品を作り始めます。
毎日、部長さんへの電話は常に鳴りっぱなし。工場から届いたサンプルがひどかったりすると、おしかりの電話をしたり、逆に、工場からの心配の電話も。
部長さんの内側の始末や、縫いのきれいさのチェックはとても厳しい。ファスナーが体にあたらないように、グログランリボンをつけたり、着心地も重視して、内側のデザインも完璧に仕上げます。
パリへ来るまでは、なんでこんなに高いんだ!デザイン料ってそんなに高いの!?って思ってたのですが、こうやって、たくさんの人の労力・時間を費やし、何回もチェックして、最高の品質に仕上げる様子を体験していると、高級プレタポルテとよばれる服の、決して高すぎない、それだけの価値を実感します。その反面、その価値への責任と使命も果たさないといけないと、緊張感は抜けません。ランバンの服を見かけたら、アルベール・エルバスのデザインもとても素敵なのですが、見かけの美しさだけじゃなくて、品質の高さにもぜひ注目して、ふと思い出していただけたら私はうれしいです。
経験と知識の塊のような人たちがいっぱいのこの場所で、たくさん勉強して吸収し、この今の一瞬も逃さないようにしていきたいです。そして、パリの服飾ママンたちともっと仲良くなって、仕事も一人前になったら、いつかは自分のブランドをたちあげたいです。とくに子ども服を作りたいです。子どもたちが、自分だけの世界から、未来や世界という広い領域に船を漕ぎだすために、いろんな面白いものを見せてあげられたら!と思っています。衣食住はつながってるので、いずれは、子どもの生活環境に対して色々な活動をしたい!
まだまだ、たいした実績もない私は始まったばかりです。もしよかったら応援してください。
藤田貴子
2007年 慶応義塾大学環境情報学部卒
2009年 文化服装学院中退
2009年 渡仏
現在、Lanvinの見習いパタンナー
http://about.me/tacomonogatari
Vogue のオフィシャルサイトでブログを書かせていただいているので、ぜひのぞいてみてください。
パリの生活の日々を綴ってます。
http://blog.talk.vogue.co.jp/taco