2012年3月24日
薔薇は本来 四季咲きのものが多く、気温が一定であれば一年中咲く花を楽しむ
ことができる。四季のある日本では、春と秋の花を見頃とし、その見頃の花を
素晴らしく咲かせるために冬には苗を冬眠させてしまう。12月には早々に枝葉を
払い仮剪定をし、1月、真冬前の本剪定ではかなり大胆に丈をつめて春の到来を
待たせる。
けれど、私は冬の薔薇が好きで、春の大きく見事な花の準備など考えず、自然に
形を成した枝につく花が、ありのまま、冬の風にそよぐ冬の薔薇を楽しむ。
そうして、いよいよ雪が降り、雪の中で凍てつきても凛と咲く薔薇を愛しみ、
それから鋏を入れることにしている。
今の冬、雪が溶けても、紅色の大輪を一輪残した一本の薔薇には、どうしても
鋏を入れることができなかった。この薔薇は、長年の「友」であったK君の希望で
植えた一本だ。
K君とは本当に長い付き合いで、間違いなくこの先も「友」であるはずだった。
互いに進んだ道は違ったが、何だか馬が合い、年に一度会うか会わないかだったが
大切な「友」の一人だった。それが、ある日を境に、K君の生き方が気になるように
なった。
勤め人のK君が、定年迄の自分を考えたのだと思う。これ迄の自分を振り返って
みたのだと思う。私の前に、予想もつかなかった人生後半のK君が出現した。
ひとは別人に変わることがあるようだ。現実に有るものは家族でさえ、人生後半の
K君には、もう必要がなさそうだった。
真冬のような今年の弥生月だが、K君の薔薇は一番に春の小さな芽をつけた。其の
枝に残した大輪の冬の薔薇は、色も褪せず凛としていて、何だかK君の人生後半の
決意のようで…。
散る時期も自分で分かっているであろうから、この冬の薔薇は、鋏は入れずに
見ていることにした。
氏名:小山 しげ子
年齢:年齢不詳を漂わせたい G13
南山時代:図書室が居場所、授業中も読書三昧
大学時代:油絵から陶芸で卒業
職業:生涯現役? 自社取締役 ただし 社員 兼 雑用係
人生:『「美」は「知性」から』…を、信じ、美を維持したいがために今頃、
勉学に励んでいる。
夢:パリで3カ月の充電休暇を取りたい。
余暇:60本の薔薇の世話