vol. 131 後藤 繁榮(S22)「いつも心にある言葉」 – Nanzan Tokiwakai Web
  1. HOME >
  2. メルマガコラム

メルマガコラムMail Magazine Column

過去に配信した「常盤会WEBメルマガ」の記事を掲載しています。

2018年6月27日

vol. 131 後藤 繁榮(S22)「いつも心にある言葉」

※本稿は、2018年2月に常盤会から発行された『Gem2』に掲載された原稿です。
 
  
 「きょうの料理」は2017年11月に放送開始から60周年を迎えました。日本のTV放送で二番目の長寿番組です。私は司会を18年間担当しています。当初はおじさんが料理番組?といわれましたが、男性も家事を分担する時代になり違和感はなくなってきたようです。料理が得意だったわけでもなく当てられた番組、先生の横にただ立っているというようなスタートでした。
 そんな私に先生の鈴木登紀子さんは「ボーっと立ってないでコショウでも振ってちょうだい」と役割をふってくれました。「そんなことなら!」と勇んだものの、振っても振ってもコショウが出てこない。「あらあらフタをしたままでしょ!」と言われて、思わず「なあんだ、コショウが故障してるのかと思いました」とダジャレをつぶやいてしまったのです。そのときスタジオの空気がふふっと緩んで和やかな雰囲気が画面に広がったそうです。収録後にばぁばから「後藤さんにもダジャレという仕事が出来たわね。それも調味料よ」と声をかけてもらったことが忘れられません。
料理の腕前は一向に進歩していませんがダジャレはいつしか番組の名物に。ネット動画でも「ダジャレが止まらない!」という名場面集?が見られているようです。
楽しい気持ちが美味しい料理をつくると信じているので和やかなスタジオをこれからも心掛けたいと思っています。
  
 料理番組の他にこれまで担当したのは、子どもたちが抱える悩みを聴く生放送、中国残留孤児の肉親を探す番組などヒューマン系が中心です。ラジオでは世界中に住む日本人を結ぶ「地球ラジオ」という番組を14年間担当しました。
 こうした番組を通じて学んだことは人の価値観は100人いたら100通りあるということです。放送は一方的に情報を伝えるのですが、受け手は一人ひとり様々な人生を送っている人たち。すべての人に納得してもらえる放送は難しいかもしれませんが、アナウンサーとして声を発するときには自分が出会ってきた人、一人ひとりを頭に
浮かべながら語り掛けるようにしています。実は南山で繰り返し聞かされた「人間の尊厳」という言葉が今の仕事を支えてくれていると思うのです。
  
<プロフィール>=================
1951年岐阜市生まれ。1975年NHKにアナウンサーとして入局。
2005年「ギャラクシー賞個人奨励賞」受賞(放送批評懇談会)。
現在フリーアナウンサーとしてNHK「きょうの料理」「ラジオ深夜便」に出演。
著書は『笑顔を引き出す会話力』(ベスト新書)『後藤アナのダジャレ教室』(小学館)など。

メルマガコラム一覧