vol. 136 内藤 理恵子(G45)「顔」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2018年12月30日

vol. 136 内藤 理恵子(G45)「顔」

※本稿は、2018年2月に常盤会から発行された『Gem2』に掲載された原稿です。
 
 
 南山高校女子部から南山大学哲学科に進学した私は、卒業後、好きな絵で自分の力を試してみたいと思い、企業への就職は視野に入れず、似顔絵師という職業を選びました。ゲームセンターでアルバイトをしながらのスタートです。
  
 ゲームセンターの短い休憩時間に外に出ると、バリッとスーツ姿で歩く多くの同年代の人たちを見かけました。そんな時、これで自分は良かったのかな、と暗渠に呑まれるような不安に苛まれました。
 
 肝心の絵は大型ショッピングモール内で「似顔絵描きます」と看板を出してもなかなか売れませんでした。自分に存在価値はあるのかと自問自答する日々が続きましたが、今は一枚一枚、誠心誠意、似顔絵を描いていくしか他に道がないと思い直し、その危機感が幸いしたのか、一年後くらいには、お客さんが少しずつ増えていきました。最盛期には行列ができるようになりました。
  
 2年間似顔絵師として仕事をした後、南山大学大学院で宗教研究の道に入りました。
修士課程(2年間)は「キリスト教思想」、博士課程(4年間)では「宗教思想」を専攻し、博士号を取得した後、名古屋市内の大学で非常勤講師をしていたのですが、「わかりやすく面白い講義がしたい」と思い立ち、映画やアニメを通じて様々なテーマについて論じられるよう、講義内容をサブカルチャーとリンクさせ、さらに
それを自身のブログとリンクさせたところ、アニメ制作会社とのコラボレーションの書籍を出版する企画が舞い込みました。
  
 2013年、その書籍が出版されると、今後は寺院住職向けの雑誌から「葬送の激変」に関する連載依頼があり、それから4年間、無我夢中でコラムを書き、世の中から無縁仏がなくなるよう仏教界にアプローチするなど奔走しました。
  
 これまでの歩みを振り返っても、自分の道がどこに通じるのか、未だわかりません。
ただ、不思議なことに、ターニングポイントには、ジョルジュ・ルオーが描いたキリストの顔(聖顔)に必ず出逢いました。偶然立ち寄った美術館の展示であったり、街中で目に留まった印刷物だったり、夢の中に出て来たり。すると潮目が良い方向に変わるのです。私を見守る大きな愛が存在することを感じます。
  
  
内藤理恵子
  
 2010年南山大学大学院人間文化研究科宗教思想専攻博士後期課程修了。
 博士(宗教思想)。
 現在、愛知大学国際問題研究所客員研究員。
 近著に『あなたの葬送は誰がしてくれるのか』(興山舎)、
    『必修科目鷹の爪』(プレビジョン・KADOKAWA)など。
 
 
 

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