2011年1月25日
杉本食肉産業株式会社の直営レストラン「スギモト本店」は、名古屋の中心、本町通沿いにあります。広小路通を、栄からなら伏見方面へ、伏見からなら栄方面に歩くと、どちらからも10分前後、つまりほぼ真ん中で本町通との交差点に出ます。ここを、南に折れ、東側の歩道を気をつけてあるくと、すぐに「スギモト本店」のお店が見えます。1階がお肉売場、2階がレストランです。
今回は、杉本食肉産業株式会の代表取締役社長杉本達哉さん(S30)を尋ね、お話を伺いました。
おいしいお肉を戴けるレストランや、おいしいお肉が手に入る店で馴染みのあるスギモトグループ。実は、売上の7割は卸など業務用の販売ということです。取引先は、肉の小売店、スーパー、ホテル、レストランなど。直営店やレストランで上質の肉を提供し、「スギモト」ブランドが定着しているので、卸も着実な売上をあげているわけです。
杉本食肉産業株式会社の創業は明治33年。さすがにその時代は、日本人が牛肉を食べるようになってから間がなく、事業を大きくすることは難しかったようです。本格的に伸び始めたのは、戦後卸売りをするようになってから、と言われます。
創業明治33年といえば、今年で111年。杉本社長は5代目ということです。今のご時世ですからなおさら、この111年をうらやましく感じるのは、私だけでしょうか。
杉本社長は、スギモトのお肉を、全国に通用するブランドにすることが目標と言われます。上海にも出店されるなど、その次をも見据えていらっしゃいますが。
ブランディングに成功すれば、値段に左右されない、よいお肉の提供ができていくので、と言われます。
たしかに、スーパーマーケットに行っても、よいお肉がほしければスギモトの対面販売コーナーを捜しますが、よいからと言って、必ずしも値段は高いわけではありません。会員向けのハガキを持って行くと、むしろかなりお得によいお肉を手に入れることができるのです!
よいお肉が手に入るとわかっていれば、ハレの日には、スギモトのお肉を使うことになるでしょう。そんなブランドに育てたい、と杉本社長は言われます。
ホームページを見ると、東京にはすでに進出を果たし、東名阪・神戸は網羅されています。お取り寄せブランドとしても、ネット検索で評判となっています。全国制覇まで日数はかからないのでは?
意外と知っていそうで知らないお肉のこと。この機会に、ということで、いろいろ伺ってみました。
まずは、皆さんも気になる、お肉の保存方法についてお伺いしてみました。
牛肉の保存は、冷蔵庫で2日間。それ以上は、冷凍保存が良いそうです。
気になるお味のほうは、冷凍してもほとんど変わらないそうです。ただし、モモ肉のように水分の多い部位は、冷凍すると水分が分離して凍ってしまい、どうしても味が変わってしまうので、お勧めしないそうです。
次は、スギモト社長お勧めの、お肉の食べ方です。
脂の少ないフィレ肉は、やはりステーキがお勧めです。魚焼き器のようなもので、両面同時に焼き、バターで仕上げ。
もちろん、サーロインも、この両面同時焼きが最もおいしいのでは...とのこと。
ハラミは、日本酒(またはワイン)としょうゆにしばらく漬け込み、こちらもバターで焼くことがお勧めだそうです。
さて、インタビューの間にも、お肉が気になって仕方がありませんでした。メニューは、すき焼きと豚しゃぶを選びました。
それに先だって、ソーセージがあまりにもおいしそうなので、お勧めの品を2品、出して戴きました。最もお勧めなのは、キュルノンチュエの「白カビのソーセージ」ということですが、売り切れていて残念。写真の2品も、お肉の味がしっかりわかる、ジューシーでかみ応えしっかりなソーセージでした。
スーパーの直営店で戴いたハムが、ローストポークのようにしっかりとした歯ごたえと味がしたことをお話すると、「本格的な製法にこだわっているから」とのこと。先のキュルノンチュエを傘下に迎えたことも、本格指向ゆえのことのようです。
お通し。左から戴いていくと、一番右がからすみで、口触りと塩味の意外さを味わうことができます。もし右から食べていたら、楽しみが減っていたかもしれません。
豚しゃぶです。豚肉は、よく火を通して食べるように、との親の教え(?)がありますので、赤みがなくなるまで泳がせます。豚しゃぶの難点は、色が変わってからすぐにお湯からあげないと、堅くなってしまうことです..と思いきや、全く堅くなる様子はありません。口に入れてみると、あくまで柔らかく、豊かな肉のうまみが広がります!どんな肉か、何か仕事をしてあるのか、尋ねておけばよかった、と帰宅し、家族に話をしながら後悔したものです。
お楽しみのすきやきです。おいしいお肉のすき焼きにしては、わりしたの味が濃めでしたが、お肉はそれにも負けず、しっかりと味わうことができます。
「せっかくおいしいお肉なのに、すき焼きではもったいないかな?」という声もありましたが、食べて払拭。お肉を楽しむことができました。
すき焼きも豚しゃぶも、お肉の枚数は少ないのですが、大皿を埋め尽くすほどの大きな肉が出てきますので、男性でも追加などせずともおなかは一杯になります。
さらに、きしめんが付き、ご飯とデザートも付いていますので、食べきれるかどうかが心配でした。
すき焼
料理も、お店で提供されているお肉も、「スギモトだから」で納得できる品質とサービス、と感じたのですが、そこで安心して手をゆるめないのが杉本社長です。
社内食肉学校として、「スギモト ミートアカデミー」を開いて、社員の研鑽に努めていたのですが、これを「全国食肉学校」として業界全体の研修制度に移行し、「肉のソムリエ」を育てるしくみを用意されているとか。マーケット全体のレベルアップは、自然に自社のレベルアップにもなるわけです。
さらに、学校給食への和牛の提供の模索、11月最終日曜日の「食肉祭り」と、お肉を広める活動もされているそうです。
創業111年の安定にあぐらをかかず、自社と業界の進化を常に目指し続けられる杉本社長に陰ながらエールを送り、お店を後にしました。
(取材:各務、樺/撮影:樺)