2011年8月17日
お盆休み前の盛夏の中、愛知県弥富市の田園風景の中にある「東洋精鋼株式会社」に訪問し、代表取締役であり常盤会理事のS30渡邊吉弘(工学博士)さんのお話を伺いました。
「東洋精鋼株式会社」は1975年に名古屋市中川区にて設立され、ショットブラスト用「カットワイヤ」の生産を開始、円柱状のカットワイヤをさらに球状に加工した「ラウンドカットワイヤ」を開発し、1989年には愛知県弥富市に本社工場を移転され事業を拡大し、現在はショットピーニング用投射材国内シェア90%、売上高31.4億円(2011年3月期)誇るトップメーカに躍進されました。
ショットピーニングとは金属の表面処理技術の一種で、微小な金属片の投射材を、処理したい金属部品に連続的にぶつけることで、部品の疲労強度や硬度を向上させる技術です。同社の製品は国内にとどまらず世界中の多くの自動車関連産業、ばねメーカーに採用されており部品のサイズダウン、車両の軽量化などに欠く事の出来ない製品となっています。
また同社の製品は航空機業界でも広く使用されており、米ボーイング、カナダ・ボンバルディア、米GE、米P&W等大手の航空機、エンジンメーカからもショットピーニング用投射材のサプライヤー認定を受けています。
Nadcap認定証
ISO14001認定証
同社はNadcap(米国連邦航空宇宙防衛契約社認定プログラム)を取得し、航空機部品のピーニングの受託加工も手掛けられており工場内ではB777などの航空機部品の加工を見せて頂きました。
工場内で航空機部品へのピーニング作業を見守る渡邊社長
「航空機の部品を加工するのは、色々大変な事か多いのですが、企業としてモチベーションが上がります。」
対象物全体を自動機で加工し、細かな部分を手作業で仕上げていきます。
それだけに留まらず投射材を使用せず超音波でピンを振動させてピーニングする装置の販売・現場加工も手掛けており、
巨大タンカーの舵(高さ10mほどの巨大なビルの様な物だそうです)、鉄橋などの溶接部分のピーニング加工も手掛けられピーニングのプロフェショナル集団として事業を拡大されています。
その一方「ショットピーニングは得られる効果の確認が出来ない、本当に信頼できるのか?」という声に応え、画像処理による製品の検査をする装置を開発され、さらには陽電子を利用したピーニング加工の合否を、非破壊で短時間に判定できる装置を共同開発し、技術の信頼性を高め、表面処理技術を広めるため精力的に活動されていらっしゃいます。
超音波ピーニング加工機のデモをされる渡邊社長。
渡邊社長の熱心な説明に思わず聞き入ってしまいました。
また世界的な供給量の広まりに伴い生産能力の引き上げと、為替リスク・関税への対応、特に最近では災害リスク対応などの為にタイに生産拠点を開設し、今年の10月には稼働を開始し、現地を始め中国やインド、米国に供給するそうです。現地には弟さんのS39渡邊裕之さんが代表者として赴任されていらっしゃいます。タイは、カットワイヤの材料の調達国でもあるそうです。
「今世界での我々のシェアは30%程ですが、近年中国などの他国の安価な投射材も出てきています、でも我々の製品は品質でも絶対に負けませんし、さらに技術開発を進め、より優れた製品を開発しております。」
と、ここまで熱心なご説明を渡邊さんから伺いましたが、南山で印象に残った事はという問いかけに対し、
同級のS30伊藤公一氏と共に
「南山に行ってよかったなと思った事は英語に親しめたこと。特に私の様な理系人間はどちらかというと英語が苦手なんですが、僕は南山に行っていたお陰で、世界中で開かれる学会などの海外出張でも全く苦にならない。中学一年の時にお世話になったマイク・リンストロム先生のお陰で英語が好きになり、高校1年のときには、南山からアメリカに語学研修にも行きましたし…」と、(今では懐かしい思い出ですが、ちょっとした武勇伝があったそうです)、とにかく楽しそうに語っておられました。
「Challenge Our Originality」という同社のモットーに相応しい、エネルギッシュな渡邊社長が非常に印象的でした。
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渡邊吉弘さんプロフィール
1978年 南山高校卒
1983年 岐阜大学工学部卒
1995年 岐阜大学大学院 工学研究科
生産システム工学専攻
博士後期過程修了 (工学博士)
2001年 東洋精鋼株式会社 代表取締役社長就任
ショットピーニング国際委員
(International Scientific Committee of Shot Peening)
中京大学大学院 ビジネス・イノベーション
研究科 客員教授
(文:大河内 写真:鈴木)
(一部の写真は「東洋精鋼株式会社」様HPより
お借りしました。)