2012年10月16日
本山駅のすぐ近く、大通りを少し入った閑静な住宅地に、桜の樹を守るかのような建物があります。シルバーの縦長のラインとガラスの外装が目を引く三階建てです。
この一階に、今回ご紹介する「SAKURA CAFE と Uライブラリー」があります。
オーナーの牛田さんと奥様の純美江さん(G15)にお話をうかがいました。
牛田純美江さん(G15)
桜の樹の右側がカフェとUライブラリーの入口。
カフェとライブラリーは建物の中ではつながっていて、それぞれ違った雰囲気を楽しめるのが、このSAKURA CAFEの特徴でしょう。
東側はラウンド形。全面のガラスと切り絵モチーフの紙のブラインドを通して、自然光が柔らかく入ってきます。ベージュ系の椅子とテーブルが配置された明るいカフェの空間。一角に置かれたグランドピアノが素敵なアクセントになっています。
Uライブラリー (左) と SAKURA CAFE (右)
カフェが円形なのに対して、ライブラリーは四角形。南側の壁は全面つくりつけの本棚。もう片側は6つのブースに区切られて、それぞれにレザーの椅子が置かれ、パソコンを使用することもできるようになっています。中央の大きなテーブルは重厚感のある黒檀でしょうか。木彫りの施されたガラス本棚や窓に飾られた陶器の馬の置物、絵など、全体的に古代中国風のインテリア。とても落ち着きのある、大人の良質な知的空間という雰囲気です。
本棚のあいだやブースの上方に、正方形の可愛い窓が作られています。あえて小さめなのでしょう。外の世界から少しだけ距離をおき、自分だけの時間を過ごせそうな居心地の良いお部屋です。
Uライブラーの料金は、上煎茶・ウーロン茶のフリードリンク付き時間制です。
癒しのカフェを・・・
「SAKURA CAFE と Uライブラリー」は、2007年にオープンして、今年で5年になります。
牛田さん一家は、ご主人のお仕事(銀行勤務)の関係で、香港、シカゴ、LA、NY、東京に30年以上お暮らしでしたが、ご主人が定年退職されたのを機にふるさと名古屋へ。約一年半をかけて、リタイア後の人生設計と事業計画を練られました。
「今までになかったタイプの、いわばシニア世代のライブラリーのような喫茶店はどうだろう。これから増加する団塊の世代の方々に利用してもらいたい。サラリーマンを卒業して自宅にいる時間が長くなると、家族から嫌がられたり、居場所がなくなったり・・・外出しても、公共図書館や若者向けのインターネット・カフェではなかなか寛げない。そんな年代の人たちが、少しお金はかかるけれども、ゆったり居心地良く過ごせる場があったらいいな。自己啓発の一助としても活用してもらいたい」。そう考えられたのだそうです。UライブラリーのUは、あなた(you)のUと牛田さんの頭文字Uから。
名古屋の歴史・経済など、名古屋関連の書籍を集めたコーナーや、城山三郎の全集、中国関連図書、名古屋市博物館・徳川美術館・名古屋ボストン美術館などの図録も。
約5000冊の書籍のほとんどはご主人の蔵書。
海外の駐在が通算約18年という牛田さんご一家。現地では、日本からのお客様を家庭でおもてなしすることが頻繁にあったそうです。
「皆さんとても喜んでくださるんですよ。そんな時は、私たちも本当にうれしくなりました。娘はそれを見て、おもてなしすることの喜びを感じたのでしょうね。お料理やケーキ作りが大好きで、カフェをやってみたいと思ったのも、そんな環境だったからかも」
音楽を専攻されていたご長女の有美さんですが、お父様のライブラリーの計画に合わせて、自分のカフェを開くという夢に向けて準備をされました。専門学校でカフェの勉強をし、他店で経験を積まれました。なるほど、それでカフェにはグランドピアノがあるのですね。有美さんが中心になって、数人のスタッフとケーキを焼き、週替わりランチを考えて調理されています。体にやさしい、国産の良質な食材を選んでいらっしゃるそうです。
純美江さんは、今は土曜日のキッチンのお手伝いを主にされていますが、ご主人はほぼ毎日勤務。コーヒーの抽出を担当されたり、接客をされたりお忙しそうです。
SAKURA CAFEのオススメ・スイート、USSYぱふぇをいただきました。
ウッシー(USSY)は、牛田さんの「うし」から。
黒糖の甘さが優しく、とても美味しかったです。
「オープンしてみて、気づいたらライブラリーよりもカフェの方が断然人気があって・・・(笑)。大人数でいらしたカフェのお客様に、ライブラリーの大きいテーブルを使っていただくこともあります。スペースがゆったりしているので、バギーで赤ちゃんを連れてこられても大丈夫!」
文化交流の場として・・・
オープン時と5周年のお祝いに、ご長女の音楽のご縁でお知り合いだった後藤浩二さんのジャズコンサートが催されました。後藤さんは南山大学ご出身!今注目のジャズピアニストです。
「後藤さんは本当に人柄の良い方で、ピアノもすばらしいですよ。いろいろな分野の素敵な方たちとお会いできる機会が多くあるのも、カフェのおかげですね」
この、文化交流の場となっていることが、サクラカフェのもうひとつの特色でしょう。、2階のスタジオやUライブラリーを使ったカルチャー教室、ピアノのあるカフェ・スペースでのコンサートやイベントなどが多彩に行われています。
グランドピアノがあること、空間の雰囲気の良さに加えて、本山駅から徒歩2分という便利さ。近隣にはコインパーキングも多くありますから車でも好都合。それに利用しやすい設定の使用料ということもあって、ピアノの発表会やリサイタル、ギターや馬頭琴の演奏会など、カフェがお休みの日曜日、または平日の夜にしばしば開催されています。
☆カルチャー教室
NOSS(西川右近家元が考案された、日舞を使ったエクササイズ)
の講座もあります。講師は家元の次女の陽子さん。
☆やまのて音楽祭
千種区の魅力を発見・発信する「ちくさ・文化の里づくりの会」主催
2012年3月から5月、揚輝荘、古川美術館、お寺やカフェなど19ヶ所でコンサートが開かれました。
今年、SAKURA CAFE で催されたのは「バロック・リュートの響き」
☆こんな企画もありました!
『プロが教える おひとり様・おふたり様の安心ライフプラン』
本の出版をきっかけに、レクチャーを企画!
年金・保険・資産活用などについて、専門家たちがアドバイス。
「お客様のレベルの高さというのでしょうか。名古屋大学、南山大学が近いので、先生方も来てくださいます。西川流のお師匠さん、民謡川崎会の家元、フラダンスや二胡の先生といった芸能の方々も。おしゃべりしながら、次の企画のアイデアが生まれることもあります。婚活パーティはどうだろう?とか」
2階のスタジオは、 前面に鏡のあるフロアー。教室のない日は、時間制でどなたでも借りられます。ミニキッチン付きですから、ちょっとしたお料理講習会もできそうです。最大20名程度の規模で、パーティやバザーなど、工夫していろいろに活用できるのでは。
◎時間制の使用料など、詳しくはHPでご確認ください。
http://www.ulibrary.jp
名古屋のこの地で・・・
そして、ここは純美江さんが東山小学校から南山女子部の中学3年生まで過ごされた「思い出の場所」なのだそうです。カフェがオープンしてから、ご近所の方に、小学校の同級だよって声をかけられたり。城山の気象台で子供の頃遊んだ記憶も懐かしいとおっしゃいます。
「女子部では茶道部に入っていました。お菓子が食べられるという理由で(笑)。でも、今とても役にたっているんですよ。カフェでお抹茶をお出ししていますから」
古いお家の庭にあった、この桜の樹を残してほしい、と設計士さんに要望されたので、「建物が少しいびつな形になってしまったのですが(笑)。でも、かえってそこがおしゃれかも。手前にある、この石の「手水ばち」も古い家にもともとあったものなんですよ」と、懐しそうに話してくださいました。
ここで何かできたら、という純美江さんの想い。そして、 シニアのための居心地の良い場所を、というご主人の構想。さらに、ご長女のカフェをやりたいという夢がひとつに重なって、「SAKURA CAFEとUライブラリー」が形になりました。
今は、オープン時に新しく植えたざくろの木が桜の樹の横にあり、カフェのにぎわいと共にどんどん枝を伸ばし、葉を繁らせています。「実のなる木を植えたかったの」と純美江さん。可愛い赤いざくろの実がなっていました。
うれしかったこと・・・
「以前、赤ちゃんを連れて来てくださったお客様が、お給料が出たから、お茶を飲んで甘いものでも食べようかな、とおっしゃって。それからしばらくして、その方が今度はお友達といっしょに。赤ちゃんはきっと大きくなったんでしょうね。ここでお友達と過ごす、こういう時間が持てるようになったのね、とお子さんの成長を思いうれしくなりました。地域の方々にほっとしていただける場所として使って欲しいですね。何かお得意のことを披露される場所だったり、いろいろなことに利用して交流の場にしていただきたいと思っています」
還暦を過ぎて、新たに事業計画を立てるという人生の選択をされた牛田さんご夫妻。シニア世代の生活を、活動的で充実したものにするための方法を、ご自身たちの力で創りだされ実行されていらっしゃいます。後輩として、お手本にしたいと思える素敵な先輩に出会えたことを、頼もしく、また嬉しく感じました。
純美江さんの幼ない時代を知り、半世紀を経てこの地に還ったご家族を待っていたかのような桜の大樹・・・今日も見守ってくれています。牛田一家と、そしてこの癒しのカフェを訪れる人々を。
(取材:あべ&しおのさき&よしだ 文:あべ)
SAKURA CAFE
Uライブラリー
〒464- 0035 名古屋市千種区橋本町 1- 64
TEL 052 789 1110
FAX 052 789 1119
E-mail info@ulibrary.jp
OPEN 月 ー 土 9:00ー18:30
定休日 日曜日 <日曜及び時間外は貸切します>
駐車場 3台