2018年7月13日
名古屋飯の代表格「あつた蓬莱軒」の「ひつまぶし」を食べるのに並んで待つのは当たり前。それでも食べたい「ひつまぶし」。名古屋松坂屋の南館10階・特選レストラン街の「あつた蓬莱軒」が、3か月の改修工事を経て、ついに、7月3日、リニューアルオープンいたしました。
名古屋松坂屋南館10階「あつた蓬莱軒」
改装前と異なる一番の特長は、80席から140席に増えた客席面積です。テーブル席とカウンター席を仕切るブースには、名古屋の陶芸家・小畑旦子さん製作の花器に生けられたグリーンが涼感を誘います。通路も広くゆったりと、いつもながらの「大入満員」の「にぎにぎしさ」を感じさせない、落ち着いたオープンな空間です。
お客さまひとりひとりに声をかけ、忙しさをみじんも素振りに出さない女将の松永熱子さんにお話を伺いました。
「何回、お出でいただいても、飽きのこないように、落ち着いた緑の多い空間にしました。豪華絢爛ではなく、癒される雰囲気を大切に。おかげさまで、オープンからひと月。この間に、すでに3回も4回もいらしてくださるお客さまもいらっしゃいます。ほんとうに嬉しいですね」
正面入口に掲げられているのは、熱子女将が「私の宝物」と大切にする洋画家・杉本健吉氏の「うなぎ昇り」(うなぎのぼり)の書。
「杉本先生(1905ー2004)は、蓬莱軒神宮店が熱田神宮の参道にあった頃からのお客さま。奥さまとお嬢さまの清子さんとよくお出かけくださいました」
「平成2年、それまで地下の食品売り場のテイクアウトのみだった蓬莱軒が、本館10階のレストラン街にオープンした時、杉本先生から直接いただいた書なんです。先生自ら、クルクルって巻いてお持ちくださり手渡されました。 平成13年、本館から南館に、店舗が引っ越した際、一時的に、この額装は、神宮店に飾らせていただいてましたが、今回の南館リニューアルを記念して、こちらに持って帰ってまいりました!!」
杉本健吉氏は、昭和期の日本を代表する画家。愛知県知多郡美浜の「杉本健吉美術館」には、「両界曼荼羅」「空海」などの作品1000点が収蔵されています。蓬莱軒の鰻の大の嗜好家で、そのお繋がりには深い絆があります。
蓬莱軒のビールのコースターも、画伯が描かれた『蓬莱山』で、季節によって藍色と朱色に染め分けられています。
杉本氏のお嬢さま・清子さん(G03)が大切な想い出をお話くださいました。「父が鰻好きで、熱田さんの境内にある蓬莱軒さんによく連れていってくれました。熱子さんのお母さまの詔子女将は、とても義理堅い方で、父の七回忌まで命日には女将自ら鰻をお供えにとお届けくださっていました。先代のせきこ女将の美しい上町言葉の名古屋弁も懐かしく思い出されます」
あつた蓬莱軒 本店 女将・鈴木詔子さん&ご長女・熱子さん(撮影:6月30日)
再び、熱子女将のお話です。
「息子の幸也(S63)と娘・百加(G61*現在、宝塚歌劇団星組の草薙稀月として活躍中)は、男子部と女子部でお世話になりましたが、このお店も、南山大学に大変、お世話になっています。外国からのお客さまが多くなり、店内の英語表記も必要になりました。お客さまでもいらっしゃる南山大学英文科の日野水(ひのみず)憲先生にご教示をいただいて、同学部卒業の古川店長が、メニュー作りに力を発揮してくれました(笑)。そして、蓬莱軒のスタッフの茶道のお稽古も、南山大学の茶道松尾流南山会の松尾尚子(たかこ)先生に永きにわたってご指導いただいています。蓬莱軒の社員として、どこに出させていただいても恥ずかしくないようにと、スタッフは皆、板場に至るまで、茶道のお作法にも日々励んでいます。はい、すべてのお店のスタッフです。昔から今も、神宮店の離れに通ってお稽古を続けているんですよ。松尾尚子先生は、12代お家元の妹さんですが、お祖父さまの10代お家元は、友の会の会長時代に、南山大学内にお茶室2棟を寄贈された方。そのご縁もあって、アルバイトには、茶道松尾流の南山大の学生さん達がきてくださっています」
この9月から「会席コース」が「個室」で「予約」可能に! 予約受付中!
南館店初めての「会席コース」が「予約」で堪能できるようになりました。9月からのスタートで、予約も受付中。ただし、「個室利用」も、「予約」も、「会席コース」をお願いする場合のみ受け付けていただけます。「昼1組。夜1組の限定」コース。嬉しいリニューアル後の新メニューです。そして、これまで本館地下の食品売り場でのみ、テイクアウトできた鰻メニューが、南館10階の店内でもお願いできるようになりました。
個室 お座敷
個室 椅子席
プレ・オープンの6月30日に招待客にふるまわれた「会席ミニ・コース」の一部をご紹介させていただきます。
今日も、松坂屋南館10階のエントランス・ホールは、順番を待つ人たちでいっぱいです。用意された待ち椅子を、ひとつひとつ椅子取りゲームのよう進んでいく楽しみを、待つ人みんな心得ています。その時間もオイシイこと、知っているんです。
文:塩野崎&写真:余語雅子(G07)
杉本画伯コースター画像提供:あつた蓬莱軒さま
写真加工:吉田
あつた蓬莱軒
明治六年創業。名古屋の味を守り続け140年。「名物ひつまぶし」は、「あつた蓬莱軒」の商標登録です。備長炭で焼き上げ秘伝のタレで仕上げた蒲焼を乗せたご飯。独特のだしと薬味で味わう、熱田で生まれ継がれた伝統の味です。
名古屋松坂屋南館店
052(264)3825
◇平日 昼
11時00分から受付終了14時30分
15時30分閉店
◇平日 夜
16時30分からラストオーダー20時30分
22時00分閉店
◆土日祝日
11時00分からラストオーダー20時30分
22時00分閉店
※混雑状況によりラストオーダー時間が繰り上がる場合があります。
定休日:松坂屋の休館に準じます
平均予算:3000円から3999円
コース料理:7560円/ 9720 円から