2012年4月23日
花道家の小川珊鶴さん(S30)が、10数年にわたって収集した帯コレクションが、ギネスブックに認定登録されました。 登録された帯の数は「1111本」。
ギネス認定賞を手にしての小川珊鶴さん(S30)
東日本大震災後の昨年11月、ナゴヤドームで開かれたイベントで、珊鶴さんは「すべてが初めの一歩」という復興への願いを込めた「1111本」の帯を使って、ドーム天井から地上に吊り下ろした高さ20メートル・幅16メートルの空中アートを完成させました。
昭和30年代から平成初頭までの高度成長期、日本がもっとも元気だった頃に作られた京都・西陣織の帯で、四季の移ろいゆくさまを表現。
秋のもみじを表した最上段の朱赤から、雪の白。春の芽生えのグリーンに薄ピンク。銀と黒。五色七段のグラデーションに彩どられた六角形の天蓋オブジェの下には、「日いづる国<日本>震災からの復興を願い、日本に元気になってもらいたいという気持ちを表現しました」という珊鶴さんのメッセージが、30種類の菊の花々の中にありました。
実際は、1500本にのぼるという帯のコレクションですが、被災地への願いを表す「1111」本を、ギネスに申請しました。日本を想い、日本文化をこよなく愛する花道家としての気持ちが、この「1111」には込められています。
折しも、4月17日に行われた「花道家・小川珊鶴の世界『日本の伝統美 五節句を体感する』の講演会」で、珊鶴さんにお話を伺うことができました。
「着物や帯の文様の美しさ、織技の素晴らしさは、日本文化の象徴であり、日本の宝。染めや織りの職人さんも、年々、減っています。婚礼支度の着物や帯もたくさんお持ちのはず。お召しにならないならば、飾ってください。着物は切ってしまっては、柄が止まってしまいます。衣桁がなくても、S字に竹を通すなど工夫して飾り、帯は後世に残していっていただきたい。絹糸ひとつとっても、もう日本では作れない。日本で作られた古き良きものは大切にしていかなければ・・」という言葉に、伝統工芸への並々ならぬ想いが感じられました。
by minami
写真は
「日本の伝統美 五節句を体感する」講演会にて
端午の節句をイメージして披露されたアヤメの着物と
龍村織物の帯「威毛錦」 龍村平蔵
(珊鶴さん所有)
(4月17日 於:うなぎの有本さん)にて
2012年4月23日 中日新聞「この人」にギネス認定についての記事が掲載されています。
「着物の帯収集でギネス認定の花道家 小川珊鶴さん」
記事全文
十五年続けている着物の帯のコレクションが、ギネスブックに登録された。その数、千百十一本。「日本の文化、芸術が凝縮された織物の文化を後世に伝えたい」と力を込める。
幼いことから歌舞伎などの古典芸能に親しみ、花道家に。生け花に日本舞踊や狂言を融合させ、舞台上で作品を完成させる独自の公演を国内外で開いている。
着物や帯は数千枚の型紙を使って緻密な絵柄を織り込んでいく職人技で作られる。着物離れが進む現状を危ぶみ、古着屋や骨董市を訪ね歩いた。収集した帯は舞台を彩どる装飾にも活用する。
東日本大震災後の昨年十一月にナゴヤドームであったイベントで、「すべてが初めの一歩」との意味を込めた千百十一本の帯を天井からつり下げ、高さ二十メートルの巨大オブジェを制作した。「日本が戦後復興を遂げ、一番元気だった時代に作られた帯。震災で疲弊した人々に少しでも励ましになれば」。着物の再評価への願いも込め、ギネス申請に挑んだ。
名古屋市東区の自宅は重さ三トンにもなる帯に埋め尽くされている。「集めた帯を展示し、柄の変遷などを研究する施設ができたら」と夢見る五十二歳。(木下大資)
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小川珊鶴
1959年 名古屋生まれ 幼少より茶華道・日舞を始め各種古典芸能に親しむ。
名古屋芸術大学美術部日本画科卒業
1991年 平成芸術花院 設立
2009年 半白を記念し御園座にて行った舞といけ花の公演「花舞伎」で
名古屋市民芸術祭2009 伝統芸能部門企画賞 受賞
2010年 八事興正寺にて夏の花会「狂花綺譚」 cop10パートナーシップ
2011年 尾張徳川家ゆかりの相応寺にて「秋の花会」
ナゴヤドーム「焼き物ワールド」メイン・ディスプレイ装花担当
その他オーストラリア領事館やカナダ領事館主催の晩餐会、国際会議などでも、いけ花パフォーマンス・公演で活躍中