vol. 13 竹村 一三(蓬左クリニック)「陽気なシナモン」 – Nanzan Tokiwakai Web
  1. HOME >
  2. メルマガコラム

メルマガコラムMail Magazine Column

過去に配信した「常盤会WEBメルマガ」の記事を掲載しています。

2006年7月4日

vol. 13 竹村 一三(蓬左クリニック)「陽気なシナモン」

私がはじめてシナモンに出会ったのは、子供の頃、祖母のおみやげ生八つ橋を口にした時です。美味しくて感激した記憶があります。それから20年ほど経ち、医者になっての就職先でシナモンに再会した折り、二度目の感激を覚えました。
北里研究所附属東洋医学総合研究所の薬局でのことです。シナモンが漢方薬として百味箪笥に収められていたのです。漢方薬というのは、深山幽谷を分け入って採集してくる貴重な物ばかりで、生八つ橋やニッキ飴、ドーナッツに振りかけるシナモンが漢方薬だなんて思ってもみなかったのです。ついでに驚いたのは、薬局には玄米もあれば小麦もゴマもアズキも生姜も麦芽糖の飴まであったことです。猛毒で知られるトリカブト、鉱物の石膏や滑石もありました。みんな漢方薬として使うのだと知りました。要は使い方一つで毒にも薬にも食品にも美術品にもなるのでした。以来30年間、私は毎日のようにシナモンを薬として処方しています。
シナモンのことを漢方では、桂皮とか桂枝、肉桂と呼びます。樹皮や枝など用いる部位により呼び方が変わります。いずれも香りが高く、辛くて甘い味がします。
漢方薬としては「陽気を補い巡らす」ことを目的に処方します。
気象医学という分野があります。気候天候が人体に及ぼす影響を研究します。
そこでは、大気圧の変動がヒトの血圧に影響することが知られています。低気圧が近づくと血圧は低下し、天気が回復して気圧が上がり出すと血圧も上がる傾向にあります。
太陽が出て晴れの日は、気圧も上がり、陽気の代表である太陽光の供給により「陽気がいいですね、気分も良いしお出かけしましょうか」、雲がたれ込めた雨降りの日は気圧も下がり「陰気な日ですね、気分もうっとうしいしおでかけはやめましょうか」、などと言います。そもそもこの陽気、陰気という言葉は易経に源する漢方用語です。人体における陽気とは、これらの会話からうかがい知られるように人体の活動性を高めるエネルギーです。いっぽう陰気は活動性を抑え休息の働きをもつと理解されます。
雨降り前に血圧が下がって頭痛を覚えたり、関節の痛み腫れを訴える方がいます。
この方達は日頃陽気が不足がちでギリギリのレベルでやっと動いているところへ、太陽からの陽気の供給が乏しくなり、かつ雨雲の陰気が作用する結果、陽気の作用がさらに低下し、気や血や水の巡りが悪くなり痛みや腫れを生じると考えます。そんな時、頭痛には五苓散、関節の腫れ痛みには桂枝加朮附湯というシナモン配合の漢方処方が有効であることがしばしばです。シナモンの陽気が太陽の陽気に代わって人体の活動性を高めてくれるのです。低血圧症で元気がない方にシナモンを大量に甘草と併せ用いて陽気を補い、元気にする処方もあります。ただシナモンは香りが高く辛くて甘い味であることが不可欠です。ベトナム産が最高です。陰気な日でも動かなくちゃいけない方には、シナモンテイーにシナモンドーナッツのおやつは喜ばれるでしょう。陽気なシナモンのお話でした。

医療法人 蓬左クリニックのホームページはこちら↓

http://www.hohsa-clinic.com

南山タウン内アドレスはこちら↓
https://www.nanzan-tokiwakai.com/web/?p=1663

メルマガコラム一覧