2021年7月25日
私は誕生日を迎えると後期高齢者になります。気分は30歳で居ようと心がけてはいますが、長く生きれば、去っていった友人知人も増えて、「秋の夕暮れ」の情緒も分かる様になって来ました。
若い頃は自分を役割で分類されることに大いに反発を感じていたのに、今では、人生とはそれぞれの役割を果たすことと心得ました。老齢の患者さんの不安もよく理解できるようになったと言いたいところですが、一方で、「その年になっても、まだそんな事を言ってるのか!」と心で思う嫌な自分でもあります。
私は生まれた場所でずっと今まで生活して来ているので、近隣のこの数十年の変化は良く分かり、住んでいた人達の事はよく思い出します。そして思うのです。同じ時代に生きるということ、直接に接触が無くても、同じ時代に生きて同じ社会で生きて来たということは何と愛おしいことなのだ!
人生に目的があるとすれば、それは生きることそのもの。長くても短くても価値あること。30歳のつもりで、これからも自分の役割を果たしたいですね。
ところで、話題は変わりますが、このコロナ禍で、高齢者がネット予約を上手くできないことがニュースでよく取り上げられています。言われてみれば、確かにこの騒動は予測できたことかもしれません。スマホもパソコンもタブレットも持たなくても、溢れる情報洪水から身を守って、機嫌良く暮らしていたお年寄りが多く居られたという事でしょう。
私の身の回りの友人知人は新し物好きな人が多く、スマホやパソコンを使っている人も多く、メールやLINEやネット検索も日常だったので、思い至りませんでした。
情報弱者という嫌な言葉がありますが、ネットで意見という形の誹謗中傷を見るにつけ、この人達こそ、正しく情報を扱えない情報弱者でしょう。
誰でも、簡単に情報が正しく使える様になるには、アプリの工夫と、とりわけ誠意が必要と思います。思いつきで何かの会員になって、退会しようとしたら、複雑すぎてできず、電話も繋がらず、腹をたてた経験は誰でもあると思います。最近では勝手にメールが来たものを配信停止にしようとしても、まだパスワードが必要なものがあり、そんなモノ覚えているかあ!と、やむを得ず、そのままにして削除し続けているものが私にも2-3あります。
その上、最近ではAmazon や楽天などそっくりの偽メールも多く、私も佐川急便のショートメールに騙されそうになったこともあります。どうも外国かららしい。詐欺電話にも注意しなければいけないし、私たち高齢者も大変です。
自分が高齢者になって後悔していることがあります。11年前に母は4年間の闘病の末、88才の自分の誕生日に世を去りましたが、倒れる数年前に、私にパソコンを教えてくれと言ったことがあります。高齢者講習に申し込んだけど、抽選に当たらなかったそうです。その時母は80才を超えていたので、パソコンの仕組みやソフトの使い方を教える困難を思い、私はいい加減に返事して真剣に聞きませんでした。教えてあげれば良かった!母の意欲を大事にしてあげれば良かった。昔、私の20才頃に、父が冗談で「孝行したいときに親はなし」、「墓に布団は着せられず」と言っていたことが身に染みます。
高齢の母の生き甲斐を助ける、それこそ娘の私の役割だったのに!
医師としての役割を全うすることは当然で自然なことですが、家族の一員として、また、同じ時代に生きる仲間としての意識も持ち続けて、少しでも人生の役割を果たしていくことが今の願いです。
高田晴子(G12)プロフィール
平成4年3月 岐阜大学医学部卒業
平成22年から現在 医療法人高田ライフ健康クリニック統括医