2007年11月17日
☆ ずっと以前、
ある研究所で、真っ暗なアルコール霧箱の中を、目を凝らして見ていたら、
ときおり、飛行機雲や糸くずのように通っていく曲線、直線がありました。「これはなんだろう?」
のちに、これが宇宙からの放射線の軌跡であり、どこにも存在すると知ったのが、私と自然放射線との初めての出会いとなりました。
時を経て今春、とあるセミナーで 「東京銀座の舗道には花崗岩が敷きつめられてあるので、放射線量の数値が高い」と聞き、「じゃぁ、私の住んでいる中部地区辺りは、どんな数値が出るのか?数値によっては危険なの?」という疑問がわいてきました。
そこで、「はかるくん(簡易放射線測定器、携帯電話大。持ち歩きOK)」を使い、大地や身の回りの物質から出ているガンマ線と宇宙線の一部を自分で測ることにしました。
「はかるくん」は、どこに行っても、何に当ててもピッピッと鳴りました。
もちろん、年月日・時刻・天候などがかわれば、同じ場所でも物でも数値は変わりますが、その度に記録し図表にしてみると、これがチョット興味深かったのです。
☆ まずは我が家です(単位はマイクロシーベルト/時)
玄関の石、1階の台所、食洗器の前、電子レンジ前、洗面所、浴室は平均0.087。
2階は0.068。年間計算をしてみると、日本全体の平均値より、ず〜と数値が高〜い!! 毎日、私はこんなに放射線を浴びていていいのかしら?
☆ 次に外に出て測ってみました
* 大高緑地公園(名古屋市緑区)の山の上は数値が高いが、ボートに乗って測った池の上は低い(水で放射線が遮蔽されている?)
* 国道一号線、高速道路は低い
* 名古屋駅地下街通路は高い
* 地下鉄の駅のプラットフォームは高い(コンクリート造り)
* JR、市バス、地下鉄の車内は低い(車体で遮蔽されている?)
* 花崗岩や岩石の多い岐阜県中津川方面は高い
* 城(名古屋・彦根・大垣・長浜etc.)の石垣付近は高いが、堀は低い
* 中央道、名神、新幹線のトンネル内は高い(岩盤・石が多い)
* 一般に病院内は高い(法律で安全基準が決められ、放射線量蓄積が規制されている)
* ラジウム温泉はカラダに良いと入浴しているが、数値は高い
* 山口と青森の知人が、当地を測った結果、日本列島の数値は、西高東低となった
☆ 食べ物はどうなの?
ある人が言いました。「放射線を当て、発芽止めしてあるジャガイモを食べても大丈夫なの?」(放射線はじゃがいもを通過するので、溜まりません)
* 大部分の食べ物には、わずかながらカリウム40という放射性物質が含まれていて、それらを食べている私たちの体からも自然放射線は出ている(男女ともやや高い)
* 干し椎茸 乾燥昆布、お茶、ポテトチップス、ほうれん草、わかめなどは数値が高い
* 米、魚、ビールなどは低い
☆ 工業面(人工放射線)での利用はどうなっているの?
* 携帯電話やテレビやパソコンに入っているICチップ、自動車のラジアルタイヤにも利用されている
* 注射器、注射針、救急絆創膏の滅菌や、バターケースの殺菌にも照射されている
* 日本人は医療面で、世界とくらべて4倍ほどエックス線を使う
* 最近流行の「ゴーヤ」は、ウリミバエ(ゴーヤの害虫)を放射線で根絶したので、沖縄から入荷できた(こんなこと知らなかったなァ)
ほんの一部を調べただけでも、私は、気づかないまま宇宙、大地、食べ物等から自然放射線を絶え間なく受けて暮らしていることがわかりました。また生活の中で様々な人工放射線の恩恵をいっぱい受けながら、それでも「ふつうに元気でいる」ことを考えると、目に見えないために、「とにかく怖い」というイメージがつきまとうこの放射線についても、”怖がりすぎず、正当に怖がることは難しい”という寺田寅彦の言葉を実感します。
与えられたデータでなく、自分で測定したので、より強くそんなふうに感じられるのでしょうか。この原稿を書き終えたら、目の前の夜光時計がきれいに光っていました。
これもひとつの放射線利用例ですね。
おわり
著者プロフィール
(G8) 大竹由紀子
総務省中部管区行政評価局行政相談委員
「フォーラム・エネルギーを考える」メンバー
「エネルギー情報研究会議」委員
「中部エナジー探検隊」代表
南山常盤会元副会長
南山常盤会顧問
南山大学同窓会元副会長