vol. 48 酒井 秀夫(S35)「南山小学校見学会と、私学ドーム祭典に参加して思ったこと」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2010年3月26日

vol. 48 酒井 秀夫(S35)「南山小学校見学会と、私学ドーム祭典に参加して思ったこと」

  南山小学校の開校は、私達南山OBだけでなく、南山の教職員の方々、 また、この名古屋地区全体に影響があったことだと思う。 教育の環境や内容で、公立小学校とは大きく異なると思われる、この新しく、ハイレベルで、マイノリティーの小学校が持つ意味はどんなものか、 また勉強を始めてままならない小さな子供達が、どんな試験を経て選抜されてゆくのか、等々いろいろな疑問が頭をよぎった。
 
 小学校の5、6年生ともなれば、子供達はある程度、自分達の目標や動機で受験にチャレンジ出来ると思うが、小学校低学年の小さな子供達を、世間や自分達のことをあまり知らないまま、このような進路に進ませることは、 私達の社会にとって良いことなのか、合否基準の設定が容易ではない中、不合格になる子供達の心境はどんなものか、また何よりも、南山小学校から南山中学校への進学が始まるかもしれないという新しい事情から、南山中学校へ自分達の意思から入学したいと願う小学生にとってのチャンスの縮小の懸念は辛いことで、 また学校としてのクオリティー低下が心配されないかとも考えさせられた。
 
 公立の小中学校に通っている自分の子供達の教育のことにも通じることだったため、この南山教育の方向性、また私学教育のあり方について、 気心の知れた男子部の先生方とはよく語り合った。 こんなことを思いながら、最近2つのイベントに参加させていただき、 私学の教育に触れる機会を持った。
 
 ひとつは、常盤会親睦事業部で企画いただいた南山小学校見学会で、このイベントは「南山っこフェスティバル」に合わせて行われたため、 先生の方々、また生徒さんやご両親とも話しをすることが出来た。
 
 南山の素晴らしさは、まず、校舎とその環境の美しさだが、小学校でも、同じように驚かされた。 全てがハイグレードで、ハイソサイエティーという一流ホテルの感じでは無い。 子供達が、そこにいつまでも居たくなるような、子供達のためを考え尽くして、 一生懸命創り上げたという、大変、温かみのある内容で、大変、感化された。「みんなの広場」というコンセプトのトイレは、広く、明るく、また何か中で問題があっても、外から人がいることがわかるように、廊下に面する部分は、すりガラスを使っている。少し高台にあるため、名古屋市を広く見渡せるような、日の光がいっぱい差し込む図書館は、愛地球博のパビリオンのようで、子供達が、楽しく伸び伸びと本を読んだり、勉強したりしていることが想像出来る。手動の紐を引っ張って下りてくる小さなプラネタリウムがあって、その中には、30人程度の生徒が入れるそうだ。自分も含めて、見学会に参加した全ての方々が、「入って星を見てみたい」と思ったことは、絶対に間違いがないはずだ。 特に圧倒されたのが、小さなチャペルで、これほど愛らしいチャペルは今まで見たことが無い。温かで可愛らしい木製のオルガンや、小さな子供達が座るための小さく可愛い椅子には感動させられた。学校のご説明をいただいた教頭先生からは、この学校を創り上げた思いが、強く温かく伝わってきた。米国人で、中学校のALT(Assistant Language Teacher)をしている友人が「何で日本の学校校舎はprison(刑務所)のようなんだ」と言っていたが、この南山小学校の優れた点などは、公立の学校にとって大変良い提案になるのではないだろうか。
 
 参加したもう一つのイベントは、11月に行われた2009年愛知私学のドーム祭典だった。こちらも、最初に自分が勝手に想像した、政治家を招いた大式典というというイメージとはかけ離れ、スケールの大きな驚きのイベントだった。千人を超える生徒達による合唱やコンサートのパフォーマンスは、 相当一生懸命に準備された、驚くほど完成度が高いもので、そのスケールの大きさも含めて、 こんなにすごいものは見たことがない。愛知の私学のたくさんの学校祭が合体したという感じで、様々な学校の生徒達が行っていた屋台も活気があった。愛知の私学の存在価値を認めてもらい、公立学校との格差を無くしていこうという関係者の方々の熱い思いが強く伝わってきた。
 
 また今回の祭典では、郷ひろみがスペシャルゲストとして招かれ、フィナーレでコンサートを行った。とても面白く、おのろけて、楽しい話をする方なのだが、その魂の入ったパフォーマンスや熱いトークは、やはりさすがのエンターテイナーだった。
教育のことについて、「どんなに自分が大切にしてきたものも、この世の中では崩れていってしまう。ただ、自分が必死で身に付けたものは絶対に崩れない。」との語りは、 特に印象的だった。
 
 南山小学校や、私達の母校の南山中高を含む私学のユニークさは、公立の世界に良い影響を与えないか。日本の教育の画一性を柔軟にして、また活気つけることが出来るならば、そんな社会における存在価値はとても大きなものだと思う。卒業して以来、学校を訪れるといつも、「どうして南山はこれほど美しいところなんだ」と感じる。また学生の時には、特に心に留めるようなこともなかった「広い教養、高い人格、強い責任感」という南山のポリシーは、実社会に入ってしまうと、その超え難い難しさから、いろいろな場面で思い出される。社会に出てからも、南山卒業生の方々と接する時には、いつも南山らしい温かさが伝わってくる。「私も南山に行っていたんですよ。」という何とも愛着のあるやり取りはとても心地よい。南山常盤会でのお手伝いが、大げさだが、自分の子供達が通う公立の学校や社会全体にとって、微小なりとも役に立っていると思うと、これは嬉しいことだ。
(2009年12月投稿)
 
酒井秀夫さん(S35)プロフィール
 
 昭和58年に南山男子部卒業、南山常盤会理事
 現在、トヨタ系会社員

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