2011年3月22日
卒業のシーズンです。恩師・友人との別れはちょっと寂しいけれど、たくさんの思い出とまた会う約束に流す涙は、家族など周りの人々にも清々しさを伝えます。
この季節になると私にも二つの思い出が甦ります。
ひとつは高校の卒業式でのPTA会長の祝辞です。お言葉は忘れてしまいましたが、内容は、卒業とは皆等しく再びスタートラインに立てること、希望を持って新しく始められること、というようなものでした。
卒業式に臨んだ私は、もっと勉強しておけば良かった、部活も怠けず一生懸命やるべきだった、と後悔ばかりだったので、その祝辞はまるで私を励ましてくれているかのように感じたのでした。卒業できたのだから、過去に思い煩うことなくこれから新たに始めればよいと、勝手に解釈して明るい気持ちになれたものです。
もうひとつは、卒業生を送り出す立場の話です。
同窓会の役員だった友人が、「卒業生に祝辞を述べなくてはならないけれど、どうしよう。何を話したらいいか分からなくて」と言うので、私は迷わず提案しました。
南山を卒業することの特別な意味を簡潔に伝えるには、その教育方針を振り返ってみればいいと思ったのです。
提案:「HOMINIS DIGNITATI」
皆さんご卒業おめでとうございます。
これからは、楽しい思い出も苦しい記憶も少しずつ忘れてしまうかもしれませんが、南山を卒業するにあたってひとつだけ覚えていて欲しい言葉があります。
入学式、卒業式だけでなく、合唱大会、生活発表会等々たくさんの行事で皆さんがお世話になった講堂の入り口上部に刻まれているラテン語で、ご存じかも知れませんが「人間の尊厳」という意味です。堅い言葉にホロコーストのような大きな問題を思い浮かべて、私たちの暮らしからはかけ離れていると思うかもしれません。でも日々の暮らしにも守るべき『人間の尊厳』はたくさんあるはずです。
家族、友人、隣人など身近な人に辛い思いや不愉快な思いをさせないように思いやる気持ちを育て続けることができたなら、その輪が広がるように望んだら、それだけで十分に人間の尊厳を守ることになります。南山卒業生の誇りになります。まず笑顔から。皆さん笑顔で新しい一歩を踏み出してください。
おまけのお話:
迷惑メールに悩んでいた私は、このラテン語をメールアドレスに組み込みました。もちろんプラスαを加えて。そしてある南山卒業生から「これって南山の教育方針ですよね」と言われた時、思いは繋がってゆくと感じて嬉しく思ったのでした。
2011.03.1.大久保洋子
大久保洋子さん(G15)プロフィール
「PHP Business Review」という経済誌で記事を書いています。
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